さんま物語 6

2018年2月26日

今回は、秋刀魚の魚市場での買付けのお話です。

 朝5時頃、魚市場のサイレンが一回鳴ります。

「今日もさんま船が入港しているぞ」という合図のサイレンです。
 

 朝5時30分位から魚市場の合図で各船の水揚げが始まります。

岸壁に着けた各船から 4tトラック1台に 勢い良くタモに入ったさんまが積み込まれます。

その時それを待っていた我々水産会社の仲買人は、素早くトラックの荷台に乗り込み、2回目のタモから さんまが積み込まれる寸前に 大小の割合を 自分の手 で識別します。
 

船から水揚げされたばかりの秋刀魚は大・中・小が入り混じっています。

 生さんまは、「大」は鮮魚用、宅配用で販売価格が高い品、「中」は加工向けで販売価格が安い、「小」は養殖魚の餌で手間にもならない品です。

 それを 一瞬のうちに識別し、買入価格を決め、入札場へ向かいます。
 
 

 現在はその様にする会社は少なく、入札寸前に積み込まれたトラックの上からただ眺めて 判断し、入札する仲買人が増えて来ました。

昔、私が先輩から〔買いに利あり〕と言われ、『原漁の買入価格に全て利益があるんだ』『原漁をいち早く手で触って、鮮度を確かめる事も大切な事だ』と 教えられたものでした。
 

しかし現在は、バンジョウ(大きな籠)に入れたさんまを 各船が入札場前に持って来て、魚市場職員が その大きさを識別し、それを仲買人が見て買入価格を決め、入札する様になりました。かつて、私が教えられた事がウソのようです。
 

けれども、船一艘全部の秋刀魚を そんな籠一つで価格を決めるのは大変な事です。

ですから、やはり自分の目で原魚を見極めたいと考える会社は 朝早く市場に来て、前記した様にトラックに乗り込んで買入価格を決めております。
 

 7時に各船ごとのサンプルを見た仲買人の入札が始まります。

魚市場のサイレンが2回鳴ります。「これが入札を始めるぞ」という合図です。
 

 籠一つで判断しての入札は、後で様々な問題を起こすことがあります。

魚は、特に秋刀魚は、満船になる数量が 海中で同じ大中小の割合で群れを成している訳が無く、漁獲されたさんまも1艘の 魚倉全部が同じ大きさの秋刀魚である筈が ありません。

だから、1艘分の秋刀魚が水揚げされた時トラック2台目になると 魚の大きさが違ってくる事がままあります。

こんな時、仲買人が〔チャン〕と云ってクレームを付けます。
 

〔チャン〕がついた時は、仲買人と魚市場と〔やど〕と呼ばれる 船主の代行を務める廻船問屋とが話し合い、価格を決めます。

それで折り合わない時は再入札を行ないます。しかし、これはお互いに感情を害するのであまりしません。

互いの信頼関係に重きをおく、昔からの女川魚市場の流儀です。
 

鮮度の悪い魚は買わない。その代わり鮮度のよい秋刀魚を運んで来たら、高値がついても買う。こうした信頼関係を築きながら、優秀船が女川港に集まるようになってきたのです。
 

 もちろん我々も 前日に明日の入港船数と水揚数量は確認し、『戦い』に備えます。

加えて、魚市場の首脳陣は 明日の隻数と数量を把握します。(不漁の場合はこのかぎりではありませんが)

「この数量では業者全員の買付数量には足りない」と判断したら、他港に入港しようとしている僚船に女川入港をお願いする、また、多い時は 値崩れを避けるため 他港に回航してもらうなど、いろいろな作戦をたてて 明日に備えているのです。
 

次回は、工場内でのさんまの製造の仕方をお話ししましょう。
 
文責:ワイケイ水産㈱ 会長 木村 喜一