さんま物語 6

2016年3月3日

今回は、秋刀魚の魚市場での買付けのお話です。
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朝5時頃、魚市場のサイレンが1回鳴ります。
「今日もサンマ船が入港しているぞ」という合図です。

 
朝5時30分頃、合図で各船の水揚げが始まります。
岸壁に着けた各船から 4tトラック1台に 勢い良くタモに入ったさんまが積み込まれます。

その時、それを待っていた我々水産会社の仲買人は、素早くトラックの荷台に飛び乗り、2回目のタモから サンマが積み込まれる寸前に、大小の割合を自分の手で識別します。

 昔、私は先輩から〔買いに利あり〕と言われ、『原漁の買入価格に全て利益があるんだ』『原漁をいち早く手で触って、鮮度を確かめる事も大切な事だ』と 教えられたものでした。

現在はその様に(トラックの荷台に乗り込み魚に触って鮮度を見る)する会社は少なく、入札寸前に積み込まれたサンマのタンクを上から眺めて判断し、入札する仲買人が増えて来ました。

そして、各船が入札場前にバンジョウ(大きな籠)に入れたさんまを持って来て、魚市場職員がその大きさを識別し見せます。

それを仲買人が見て買入価格を決め、入札する様になりました。
かつて、私が教えられた事がウソのようです。

 
船から水揚げされたばかりのサンマは、「大・中・小」大きさが入り混じっています。
生サンマの「大」は鮮魚用・宅配用で販売価格が高い品、「中」は加工向けで販売価格が安い。
「小」は養殖魚の餌で手間にもならない品です。
それを一瞬のうちに識別し、買入価格を決め、仲買人は入札場へ向かいます。 
 
けれども、船一艘 全部の秋刀魚を そんな籠一つで価格を決めるのは大変な事です。
ですから、やはり自分の目で原魚を見極めたいと考える会社は、朝早く市場に来て前記した様にトラックに乗り込んで買入価格を決めています。
 
 
そして朝7時。この時、魚市場のサイレンが2回鳴ります。
これは「入札を始めるぞ」という合図です。

各船ごとのサンプルを見た仲買人の入札が始まります。
籠一つで判断しての入札は、後で様々な問題を起こすことがあります。

魚は、特にサンマは、満船になる数量が 海中で同じ大中小の割合で群れを成している訳が無く、漁獲されたサンマも1艘の 魚倉全部が同じ大きさのサンマである筈もありません。

ですから、1艘分のサンマが水揚げされた時トラック2台目になると魚の大きさが違ってくるという事がままあります。こんな時、仲買人が〔チャン〕と云ってクレームを付けます。
 
〔チャン〕がついた時は、仲買人と魚市場と〔やど〕と呼ばれる船主の代行を務める廻船問屋とが話し合い、価格を決めます。それで折り合わない時は再入札を行ないます。

しかし、これはお互いに感情を害するのであまりしません。
互いの信頼関係に重きをおくのが、昔からの女川魚市場の流儀です。
 
鮮度の悪い魚は買わない。
その代わり鮮度のよい秋刀魚を運んで来たら、高値がついても買う。

こうした信頼関係を築きながら、優秀船が女川港に集まるようになってきたのです。
もちろん我々も 前日に明日の入港船数と水揚数量は確認し、『戦い』に備えます。

加えて、魚市場の首脳陣は明日の隻数と数量を把握します。
(不漁の場合はこのかぎりではありませんが)

「この数量では業者全員の買付数量には足りない」と判断したら、他港に入港しようとしている僚船に女川入港をお願いする。

また多い時は“値崩れを避ける”ため他港に回航してもらうなど、いろいろな作戦をたてて 明日に備えているのです。

 
 
次回は、工場内でのさんまの製造のお話をしましょう。

文責:ワイケイ水産㈱ 会長 木村 喜一